前回どうも過激な言葉が多すぎてうまく伝わっていないかもしれませんが、あれは決して精神論ではありません。
戦場の兵士なら相手を殺すことを、試合場にあがる武道家なら試合に勝つことを目的として、常に最善を尽くさなくてはなりません。そのために必要なのは無謀な特攻でも、痛みや苦しみに酔うことでもありません。冷静な分析と判断です。前回特に言いたかったのは自分の肉体的な損傷もその判断材料の一つに過ぎないということです。不利な状況に陥っても今あるもので目的を達成する方法を考える。
勇気は何から生まれるか。自分は希望だと思います。勝ち目、勝算と言い換えてもいいです。彼我の戦力を冷静に分析して、戦略を立て、勝算を導き出す。勝ち目がなければやらないのか、じゃなくてどんな状況でも自分で考えて勝ち目を導き出せってことです。勝ち目がある、と自分で思えれば不利な戦いにも勇気がもてます。潔く、正々堂々、というのは言い換えれば現実と向き合わず、冷静な分析を放棄しているのと同じです。最善を尽くし最後まであきらめない、という方が武道の本質に近いと思うのです。
最後に国家安全保障の話で聞いたことのあるたとえ話をひとつ。コップの水についてなんですが、よくある心理学の話とは違います(半分もあるとか半分しかないとかいうアレ)。
コップの水が8割あるときは8割しかない、と考える。
コップの水が3割あるときは3割もある、と考える。
余裕があるときにも油断せず警戒して備える。余裕がなくなってもあわてず今あるだけのものでやれることをやる。ってことだと理解しています。